明日の予告を教えてやる
勘違いするな
俺は自分の為にやってるわけじゃない
何がしたいかって?
まあ、黙って見てろよ
俺が世界を変えてやる
ネットで犯行予告する「予告犯」の言葉。
「世界を変えてやる」って言葉に
どんなスケールの仕掛けで世界を変えるのか楽しみにしてましたが、
いろんな意味でそれは僕の期待外れでした。
世界は何も変わりません。
ほんの束の間、法では裁けない社会悪を懲らしめるヒーローとして世間を賑わせただけ。
それどころか真の目的は世界を変えることではなく…
あ、いやいやいや、見事にやられましたよ。
こんなに心地よく泣ける期待外れは大歓迎っすよ。
前半はエリート女刑事が犯人像に迫っていくサスペンスなのに、
中盤以降は大きく舵を切って、
事件の本質をあぶり出しながら社会派ドラマに昇華させていく。
中村義洋監督らしい見事な演出でスクリーンに釘付け。
そして、クライマックスでは止めどなく涙がボロボロ溢れてきました。
「人は誰かのためになると思えば小さなことでも動くんです」
というセリフが印象的で、
何も見返りを求めないからこそ、
どこかの誰かのために何かしようと動けるんだよね。
気がつけば上を見上げる余裕すらなくなるほど、
希望という明日には最も遠い社会の底辺まで落ちてしまった彼らは日々、
低賃金で過酷な肉体労働を強いられ、その挙句が…うあーー、なんてこったー。
今、世の中的には派遣労働法の改正で「一生派遣のまま」という事態にもなりかねない状況にありますが、主人公のゲイツ(生田斗真)もまさに正社員になるために必死で汗水流してたのに、上司からさんざんこき使われ、その挙句に胃潰瘍で吐血して入院するハメになったことで、今度は復職しようと思っても入院期間という“空白”が足かせとなって仕事が見つからない。
そして、行き着く先は日雇いしかない。
恨むならブラック企業の上司ではなく、
こんなシステムを作った社会を恨むしかないけど、
これが派遣の現実。
いかなる状況にあったとしても彼らの犯行は決して許されるものではない…
それは誰もが分かってるけど、彼らはその犯行を正当化するつもりもなければ自らキチンと罪を償おうとしてるわけだから、こんな社会にしてしまった政権与党をこのままにしておくのは怖い気が…って、ここは個人的な意見なのでスルーしてください。
世論を利用する政治家のパフォーマンスの方がよっぽど悪人に思えたので、
彼らのお仕置きには共感する部分がありました。
まー、監督と脚本家が同じコンビなので、
「白ゆき姫殺人事件」と変わらないネットでの炎上ぶりがありふれた演出でしかないのは残念だし、ご都合主義も多々ありますが、そんなことはもう涙で見えないクライマックスで全部吹っ飛びました。
…と、見た直後は号泣しながら思ってましたが、
実はこのレビューを書いたのはもう4ヶ月以上前だったりするんです。
時間の経過とともになんだか勢いでごまかされた感じがしてきて、
僕の泣きツボを見事に突かれたから条件反射で思わず泣いちゃったけど、
冷静になって振り返ってみたら「おいおい、ちょっと美談すぎるやろ」って気分だったりする(笑)
それでも楽しいエンターテイメントでした。
生田斗真の俳優人生の代表作になっちゃうんじゃないかな。
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